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ミスチルの深海の全曲レビュー

90年代後半にミリオンヒットを放つミスチルが前作のアトミックハートの次に手がけるアルバムはどうなるか世間的には注目は高かったように思える。割とポップで程よくメッセージ性の高いシングルが続いていたのでそれを踏襲したアルバムかと思った僕の期待は思わぬ方向で裏切られた。

 

今回のアルバムの方向性を指し示す指標としてアルバム発表前に出された二曲がそれを物語っていたのだ。名もなき詩と花の二曲である。今考えるとアルバム発表前のこの二曲は今までのシングルからすれば異彩を放っている気がしなくもない。ポップだが何処か暗くて物憂げなそんな雰囲気。

 

そう。今までのシングルとは切り離して考えて欲しかったのだろう。この後に出るアルバムに先駆けての二曲のシングルがこのアルバムのコンセプトである。そして発表された深海はシーソーゲームやesなどを抜いたコンセプトアルバムである事が判明。シーソーゲームやesはこのアルバムの方向に合わなくて収録されていない。

 

前置きが長くなった。そろそろレビューを始める。今回もインストゥルメンタルは割愛させてもらいます。

 

1.Dive [1:36]

 

2.シーラカンス [4:40]

 

うーむ。この難解な歌詞の曲をアルバムの先頭に持ってくるとは。挑戦的。アルバム全体の世界観を指し示すのには最適な先頭曲かもしれない。最初のイントロから暗い。そして低い声で何処かかすれた声で歌う出だし。

 

内面の世界での呟きを現したような歌詞。これが難解を極めている。シーラカンスとは。これがわからないだけに難解性を増している。文明が発達した現代社会にシーラカンスは価値がないと歌い、シーラカンスを何処かで待っていて、心の中にシーラカンスが居たような気がすると歌う。

 

忘れ去られた無用の長物だがシーラカンス桜井和寿にとっては必要としてるようである。それをこの曲を通して歌っている。暗い楽曲だがなんだかゾクゾクするような印象を受ける。僕自身もこの曲は好きなんだが好きと人にあまり大手を振って言えないような不思議な楽曲。

 

3.手紙 [2:49]

 

短い楽曲。個性的の歌詞の多いミスチルの中ではシンプルで捻った感じがない素直な歌詞。

 

4.ありふれたLove Story ~男女問題はいつも面倒だ~ [4:27]

 

難解なシーラカンスと違い分かりやすい楽曲。あっけらかんとして明るい曲調なのだが歌詞が絶望的に暗くて救いがない。この頃は本人も何か今の自分たちの状況を嘆いていてそこに共感してもらいたかったのではないか。

 

ヒットメーカーとして順風満帆、何ら問題なくて幸せそのもとと俺たちの事を勝手に決めつけるなと。それを踏まえて聴くと納得するような気がしなくもない。SNSもなかった時代にグチャっとして救いようのない気持ちを吐き出すのには発表する曲で表現するしかなかったのだろう。

 

男女の恋愛問題を通じてままならない状況を明るい曲調に合わせて歌う。その描写がまあ上手いのです。なるほどなと頷く。

 

5.Mirror [2:58]

 

短いながらも存在感を示す楽曲。この曲だけは深海から切り離して他のアルバムに入れても違和感なく溶け込める気がする。シンプルな演奏でロック色は少ない。楽器は木琴やピアノやハーモニカが入っている。肩の力が抜けたシンプルなフォークソング

 

僕自身はこれはアルバムの中で1番とっつき易くて1番好きである。そうこれは単純明快なラブソングです。ヒットやロックやポップなどを狙ったんじゃなくて。幸せな気持ちにさせてくれるそんな雰囲気の楽曲。

 

6.Making Songs [1:07]

 

7.名もなき詩 [5:28]

 

説明不用の名曲。歌詞が最高過ぎる。主人公は現代社会に何処か生きづらさを感じているのかなと思える。だけど前向きに生きようともがいている。

 

あるがままの心で生きられぬ弱さを誰かのせいにして過ごしてるという歌詞。大人になってしまった主人公。自分の気持ちに蓋をして何処か利己にいきてる。でも対極にあるがままに生きてる人を僕は知っている。そう自我が目覚める前の子供である。子供は本能のままに食い喋り寝て好きな事だけ勝手気ままに言って好きなように生きてる。

 

知らぬ間に築いてた自分らしさの檻の中でもがいてるならという歌詞。なるほどな。自分らしさというのが檻となって出られないようになって苦しいと。やはり対極となっているのは子供だと思う。

 

子供は残酷で辛辣な事を時にしたり口にする。ストレートに悪口言ったり好き勝手に思った事を行動したり口にしたり。それはあるがままに生きてるからである。それは強い事だが大人社会では通用しない。それを防ぐために自我が目覚めいつの間にか社会に自分の気持ちを押し殺して蓋をするようになる。ん?まてよ。シーラカンスで示していたシーラカンスってコレの事ではなくて?

 

そして自分らしさの檻の中でもがいているのは僕だってそうなんだと歌う。究極の寄り添い。本当に優しい歌詞だなと思う。もがいているのはお前たちだけと突き放す訳でもなく自分もそうなんだと歌う。

 

8.So Let's Get Truth [1:48]

 

ザ、長渕剛な楽曲。ハーモニカも入りアコギ一本で長渕剛風に歌う社会風刺ソング。ゴミのようなダンボールとか老婆とか出だしから刺激的な歌詞。子供たちは教養を植え付けられて利口なフリをして生きさせられてると歌う。

 

その成れの果てが名もなき詩で出るようなもがいている主人公やシーラカンスを求める姿となっているような気がする。そして真実を追い求めろと歌う。

 

9.臨時ニュース [0:15]

 

10.マシンガンをぶっ放せ [4:26]

 

深海の中で最も救いのない楽曲。だけど中毒性がありスッキリする不思議な感じ。救いがないのになんでスッキリするのか。ただただ嘆いてるだけに見えるが嘆きすら芸術に変えてしまうのがこのバンドの偉大な所である。

 

その完成度故にシングルカットされた。歌詞の完成度が秀抜で抜きん出ている。触らなくたって神は祟るとか本当に唸る。今という時代は触らぬ神に祟りなしなんて言えてた牧歌的な平和ボケした時代じゃないんだ目を覚ませと痛烈に歌うのが小気味良い。

 

シーソーゲームのカップリングのフラジャイルという楽曲があるがこれもメッセージ性が強くてこの楽曲と似通った部分がなくもないがフラジャイルを突き詰めた境地がこの楽曲の気がする。

 

11.ゆりかごのある丘から [8:52]

 

深海発表前からずっと温めていたアマチュア時代の楽曲がここにきてお披露目となった。戦争と好きな人と別れた悲しみがテーマ。壮大で鳥肌が立つ悲しい曲なのだが長過ぎる曲なので何度も繰り返し聴くタイプの曲ではないのかなと僕は思う。僕的には重すぎてアルバムの中では聴くのを避けていた。

 

12.虜 [4:17]

 

主人公は駄目男。ロックな楽曲。グチャグチャになった恋愛関係をなんとかしようともがいている苦戦してる様を歌う。ありふれたlove songの主人公がもがいている様の描写だろうか?

 

今作はもがいたり苦しんでる主人公が多い。誰もが何か問題を抱えていてままならない。そして後半では女性コーラスが入って嘆きとともに虜になって天国へと渡ろうかと締めくくる。

 

13.花 -Mémento-Mori- [4:42]

 

深海発表前の先行シングル。ため息とか消えてった小さな夢とかちょっとした悲しみを歌いながら優しく笑って生きようとする前向きな楽曲。絶望感漂う今作に咲いた希望の一輪の花である。

 

14.深海 [4:50]

 

一曲目のシーラカンスの答えのような楽曲。深海の中に静かに沈んでいくようなイメージがする。これから何処に向かうんだと問いかける。何処か投げやりで投げ出したような風に見える。自分のチカラじゃどうにもならないと言わんばかりに。

 

最後に願望としては連れ戻して欲しいと答えを示している。まるで売れる前のミスチルに戻りたいという暗示だろうか。この頃のミスチルは色々あって病んでいたのは間違いないのである。