とまあ、タイトルで示した通りなんだが今回はFF(ファイナルファンタジー)とドラクエの演出論の違いについて。前々からずっと思ってた事を改めて言葉にして伝えてみたいと思う。
その前にFFとドラクエを比較してどちらが上か下かみたいな議論じゃなくあくまで一部分についてだけの話にとどめたい。
せっかくなんでFF4とドラクエ4を比べてみよう。FF4は主人公を含めて他のキャラが喋りまくるのが特徴だ。フィールド上で街で洞窟でありとあらゆる場所でキャラが喋る。強制的に会話イベントがはじまり会話劇が展開される。
それは愉快で楽しい。このシステムのメリットは圧倒なキャラ立ちである。一時期しか加入しないシドとかパロムポロムもどんなキャラだったか思い出せるくらいのインパクトを与えている。
ただそのためか悲しいイベントの際に感じるの先回りしてキャラが気持ちを代弁するためかあまり泣かせ演出(意図的にしてるかわからないが)が泣けないのだ。
たとえばパロムポロムが身を挺して石化して主人公たちを守るシーンやヤンやシドも自己犠牲をして命を張るシーン。感動的なはずなのだがそのあとにセシルや他のキャラが落ち込んでいる悔やむ会話が入っている。
そのあとでパロムポロムやヤンやシドが実は生きていた事も相まってか泣けない。なんていうんだろな。主人公を含めてキャラが先回りしてプレイヤーが感じた悲しみや怒りを先に代弁されたら何か冷めてしまう自分がいる。僕だけかも知れないけど。
泣かせにくるような専用音楽が入ることも相まって余計にこれはなんだろうと思ってしまう。これに関してはFFの方法論というか泣かせ演出はあまり好きじゃないというか何も感じないというのが正直思う。
相対してドラクエの方は堀井雄二さんがフリーライターだった事もあり巧みである。僕はポートピア連続殺人事件の頃から堀井さんのテキストの凄さに感心していた。
ドラクエはあくまで主人公は全く喋らない。他キャラも後ほどのリメイクでは会話システムで喋るが基本的には喋らない。ドライで淡々としていてイベントもサラッと流すような印象。
FFみたいな強制会話イベントもない。誰かを仲間にする時にチラッと会話するくらいだ。ドラクエはFFとは違ってあまり仲間サイドが身を挺して主人公を守るイベントはない。
だけどたまに泣けるイベントも散りばめられている。たとえば第5章。主人公の村のイベントだ。村にいる人に全員話しかけるイベントがある。善良な村人ばかりで幼馴染のシンシアとも仲良しで誰が見てもリア充な主人公。
ところが村にピサロ軍が襲来。主人公は土壇場でお前は特別な存在と聞かされかくまわれる主人公。シンシアが自分が主人公に化けて代わり出てくると告げる。外では不穏な敵の攻撃音がバンバン流れる。
主人公は外の様子が何も見えない。地下に閉じこもっているからだ。このあたりの想像を掻き立てるあたりの演出が上手い。攻撃が止んで音楽が一瞬消える。外からピサロ軍の会話が聞こえる。もちろん主人公は喋らない。
自由に操作することが出来るようになり外に出る。すると村は焼け野原。毒の沼地ができているし村人は誰もいない。心えぐられる。主人公は何も喋らない。この無駄な演出がないそのまんまをぶつけるところが泣かされる。
ドラクエにとって主人公はそのまんま自分自身なのだ。自分が何を感じるかに重きを置いてるのだ。だから主人公が先にプレイヤーより多くを語ったりはしない。その分ストレートにプレイヤーに訴えかけてくる。シンプルすぎる故に
堀井さんがそういう方法論を確立したのはやっぱり凄いと思う。自分が動かすキャラがあまり多くを語らず想像の余地を残したあたりが。他にアッテムト鉱山もリアルに泣ける。
ずっと音楽は主人公が死んだ時のエレジーだかレクイエムが流れている。この場所は地味に時間経過で村人の人数が減っていく。毒ガスで街の人は次々と倒れたらしい。墓もある。
極めつけはしかばねが持っていた手紙である。調べたらこの坑夫は毒ガスで死んだと思われるが手紙には息子と娘(だったかな?)がなかなか帰って来ない坑夫を案じて今度会いに行くとつづられている。うおお…書いていて鳥肌が。トラウマ級のエグさである。
それを見た主人公サイドの陳腐な「こんなのひどい」みたいな演出がないのがいい。そういう感情を出す余地を僕たちプレイヤーに残しているのだ。
確かうろ覚えだが別の章でこの坑夫の息子と娘がどこかの街で船に乗ってお父さんに会いにアッテムトに行くみたいなこと言ってた気がする。弟のピピンがお父さんに会えるとはしゃいでいて。涙腺が…なんてエゲツないシナリオを考えるんだ。恐ろしい。
というわけで長くなってしまったが僕はシンプルであまり演出が入らないドラクエの泣かせ場面の方が好きである。FFはちょっとやらせ臭いかなと前から思っていた。あくまでその部分だけである。どちらが面白いゲームかという話ではない。
でもFFも進化したなと思う。FF6のシドに魚を食わせて死なせてしまい悔いてセリスが自殺を試みるシーンとかもFFシリーズではじめて泣けた。あまり無駄な会話もなくセリスがオペラ座で演じたのとシンクロするような形で…
絶望の末に飛び込むが生きながらえる。仲間も失ったけどもう一度奮起しようとするところも含めていい。とまあ長々と綴ったが共感してくれる人が何人かいたら幸いである。