タイトル通りに今回は森高千里についてだが僕が彼女を知ったのは遅かった。彼女は80年代後半には既にデビューしていたのだがその頃の楽曲はあまり知らなくてテレビではたまに見かける程度だった。
その前に彼女を知らない世代もいるかも知れないから軽く紹介を。彼女は熊本出身のシンガーソングライター。たまに自分でドラムも演奏する。最初の頃はミニスカートにフリフリ衣装でよく歌っていた。失礼な話だけど僕はその感じから勝手にちょっと頭が弱いよくいるアイドルの1人という印象だった。
学生になってから自分でこづかいを貯めて彼女のアルバムを買ったのだがその中に"風に吹かれて"という楽曲があった。聴いてみたらかなり泣ける名曲だった。
彼女はとにかく作詞能力に長けたアーティストだという事がわかった。コミカルの方面に振り切った楽曲と真剣に真面目な楽曲が混雑していて振れ幅の大きさが楽しい。
で、この風に吹かれてという楽曲は真面目に舵を取っていて歌い方も真剣なのだ。コミカルもこなせて真面目もこなせるアーティストというのは本当に上手いアーティストでないと出来ないと思う。
"遠いところへ行きたい"と歌う彼女。というのもJALのCMのタイアップ曲だからそれに合わせた歌詞になっている。わかりやすい。
"名前も知らない街と名前も知らない人
あの空の彼方のどこかまで行ってみたいな"
と続く。そしてその理由がサビになって明かされるのだ。
"昨日の夜はごめんなさい 別れる事がつらくて
泣いても 泣いても 涙止まらなかった"
と明かされる。なんだろう僕に語彙力がなくて泣けるとしか言えない。何故泣けるのか考えてみるとそのストレートで真っ直ぐで素直な歌詞が刺さりまくるからではないか。
今時の楽曲にここまでストレートに飾らない歌詞の曲があるだろうか。彼女の言葉、歌詞は平易でわかりやすくてヒネリがない分無茶苦茶に刺さるし泣ける。
"昨日の夜はあなたのこと 許せなかった私は
本当に 本当に 今は忘れたいだけ
どこか遠いところへ行きたいな"
と続く。なるほど。そういう事だったのかと。遠いところに行きたい理由が明かされて納得する。倒置法のような使い方で遠くに行きたい、悲しくてやりきれない気持ちを際立たせてくれる。
バックの音楽も素朴で美しくて聴いていて疲れない。だから何度も聴ける。それでいて何度も泣ける。実際には泣いてないけどなんだろう泣いた後みたいなスッキリ感がある。
あとは彼女がこれまでに放ってきた楽曲とのギャップも良い。ハエ男とか臭いものにはフタをしろ!とかコミカルでオジサンをぶっ刺したりしていた彼女がこのように真面目で泣ける楽曲を作れる事で彼女を改めて見直した。ただの軽いアイドルではなかった。
多分、女版の槇原敬之というのが近いかな。彼女を評するとしたら。彼も平易な言葉でわかりやすくてそれでいて歌詞に非凡な才能を感じる。
この"風に吹かれて"は年に何回か思い出したかのようにYouTubeで聴いてしまう。29年も経た今でもたまに聴きたくなる褪せない名曲なのである。当時の思い出もフラッシュバックして泣けてくるのである。